稲荷杜盲点外伝〜御用聞き頂上決戦〜

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 関東最後の秘境・稲荷杜(とうかんもり)。
ときおり不可解な死亡事故がおきちゃったりする事もあるが平和な町である。
名所・名産特になし。無理に挙げれば「アクの強い住人達」ぐらいか?とまあそれぐらいに何もない町だ。
そんなヒナビた町の商工会議所の一室。静寂に満ちた部屋に2人の男が対峙している。

「今日こそは…」眼鏡の青年が沈黙を破った。
風貌こそ学者のようだが、飾り気の無い長袖シャツやスラックスのそこかしこに立体感を与えているのは
まぎれも無く鍛え抜かれた筋肉である。

「…決着を着けようか」応じた男も見事な肉体をしている。
こちらはその肉体を誇示するかの様にジーンズにランニングシャツ姿、剥き出しの腕の太さは眼鏡以上に見受けられる。
しかし服装は若いが実年齢は眼鏡よりかなり上、実年というかストレートに中年といったところか。
歳で負けても風貌は互角、眼鏡にはないワイルドさがウリか?。会社の金で自分主演の映画を取ちゃうような二枚目だ。
『キムタクよりカッコいい』と自称してもよいのではないだろうか?。

「われらの『勢力分布』はほぼ同等。他の奴らは既に引退…駅前ストアに取り込まれた」
遠い目をしながら中年が続ける。東洋人にしては彫りの深い面構えだが、高い鼻梁がほんのり赤い、酒焼けであろうか。

「古来より『御用聞き』といえば米屋。その事実を貴様に教えてやる。酒屋!」
眼鏡が語気を荒げた。言葉通りなら、この眼鏡の青年は米屋であり、そして中年の赤っ鼻が酒屋のようだ。

「ふふ 若いな、米屋?先代はそうじゃ無かった…」米屋の言葉を受け、中年の酒屋が挑発的に言う。
その言葉を遮るように「親父の事は言うな!」と叫ぶや、いまにも殴り掛かからんとする勢いの米屋。
酒屋が更に挑発するかのように言う「まあいい親子共々ワシが引導を渡してくれるワ!」

『御用聞き』それは古来より日本商業に根付いた訪問販売法だ。
各家庭をまわり、注文を受け・配達する、そして又注文を受ける…その一貫した訪問販売のシステムは
完成した円環をなし、地方在住者の生活に欠かせない。そして従事する者達は各家庭の生活習慣すら熟知し、
次のニーズを予知する(つまり家庭別に「そろそろ欲しい」と思うモノ把握して先に売り込む)までになる。

 さらには『エキスパート』というべき者たちが居る。彼等は「商品を売る」だけにとどまらない。
訪問に際しての立ち話。その内容は「噂話」であったり「お悩み相談」であったりする。原始的マスメディアといえる。
それは家庭にこもりがちな奥様がたの娯楽となり、ストレス発散にもつながる。こうして信頼関係をむすんだ彼等は
「もうひとりの家族」とまでいうべき存在になる…そして更にその上になると…「本当の家族」になっちゃったりする(笑

 先ほど酒屋が言った『勢力分布』とは、この町内の家庭を人知れず、酒屋派と米屋派に2分している事をさしている。
くだけた言い方をすれば、『二人して町内中の奥さんを半分づつ喰いまくった』のである。片田舎では良くある事だ(嘘
それだけなら単に『ご町内の間男No1決定戦』なのだが、実はこの問題はそこだけに止まらない。
 この町の酒屋と米屋は扱う商品がいくつかダブっている。具体的には酒と味噌はじめとする食卓調味料である。
米屋で酒などを扱うのはかなり異色ではあるが、まるで関連のない話でも無い。なにせ酒は米を原料としている。
良い酒を造るには良い米が必要不可欠――こだわりある杜氏(酒の仕込みを行う人々)ほど、そこに至るものだ。
そのような杜氏は自らの手で稲作から仕込みまでを一環して行う様になる。『こだわりの味』というヤツだ。
そして米屋は、そんな杜氏の家と、米の専売契約している関係で扱っている。しかもそれらは名酒と呼ばれる酒だ。
米屋派の家庭ではチョット高くとも、酒・調味料は米屋で買う。つまり酒屋の儲けが減る。そして逆もまたしかり。

 つまりこの勝負には店の売り上げと色男のアイデンティティが掛かっている。
ちなみに数年前先代の米屋――つまり青年の父が酒屋に負けた事により、一時的に勢力は酒屋へと傾いた。
しかし青年が米屋を継ぎ、まさしく「精力」的な活動により五分にもどしつつあった。
そして迎えた直接対決、どちらにしても負けられない一戦である。

 ドンドンパフパフと自分達で用意した鳴り物と紙吹雪の中、
米屋と酒屋はブリーフ一丁の正調村西スタイルで相対した。
「決着の方法は御用聞きの基本中の基本である『人妻コマシ』勝〜負!」
米屋が高らかに宣言する。スター水泳大会における、往年のお○もま○おを彷彿させる宣誓であった。
…しかしどう考えても、公序良俗に反する『基本』だ。

「判定は公平を期す為に、双方未だ手付かずの此の方にお願いしました〜」
酒屋が大袈裟なジェスチャーで後方に手を振ると…そこには――

「あの〜ココどこで…「本日のジャッジはぁ〜簸川芳野さぁん!」ドンドンパフパフ!
米屋&酒屋が芳野の疑問を遮るように、ジャッジという名の生贄を盛大に紹介する。
この日の為に御用聞き達は、この美しき未亡人が盲目なのをいい事に無理やりご招待したのだ。
断じて拉致監禁では無いので、芳野の問には答えられない。というか「問われてはいけない」のだ。

「あ…あの私はどうしてココに?とゆうかココは…」どどーん!
唐突に和太鼓が鳴り響き、芳野は反射的に縮こまる、又も疑問を遮られた格好だ。
『先攻米屋!ギャジメェ』どこか電子音ジミた音声が有無を言わさず米屋の先制を宣誓した。

「ええと、あのどちらさまでしょうか?」自分へとにじり寄る、殺気にも似た気配に芳野が誰何すると
「はっはっは、奥さん。私は米屋です」と正しくもどこかズレた答を返しつつ、するりとブリーフを脱ぐ米屋。
デロンと、まろび出たイチモツはかなりデカイ。が、しかし――
「う ぉ お ぉ 〜」そのモノを見た途端に酒屋が叫んだ!
「う わ ぁ ぉ っ キッタネぇなぁ、勝負の日ぐらい洗って来いよ!」酒屋が吼えた。
見れば米屋のナニの雁首にはグルリと白い輪が出来ている…というより全体が白濁色をおびている。
その色といい、質感といい、陰部特有の恥ずかしい垢を彷彿――というかそのものだ。

「なっな…ナニを言うか! 『痴 垢』ちゃうわ!」
と慌てて否定する米屋。指でその白濁をすくい、ホレと酒屋に差し出す。
「ち ょ っ ち 舐 め て ミ ソ ?」

「ひ ぇ、え ん が ち ょ!」指を交差して飛び退く酒屋。
それを見た米屋はヤレヤレと溜息をつき
「じゃあ奥さん味見して」と芳野の口へと指を差し入れる。
盲目ゆえに何の抵抗もせず指に舌を這わせる芳野。
「あら?この滋味にあるれるお味は…」

「そうです!主成分はビタミンB1・ビタミンEそしてオマケに繊維質…
 〜不要だなんて思ったら大間違いよ、栄養源!お米の先のふくらみはカッケも直す証拠なの〜
 不要物のようで、さに在らず!皆様の美容と健康を支える『米ぬか』です!」
「!?な ぁ に ぃ 〜」酒屋が驚愕の叫びをあげた。

〜中国武術ニ『毒砂掌』ナル暗殺ノ秘術アリ〜
『毒砂掌』それは「毒手」とも呼ばれる暗殺者が行う特殊な武術トレーニング法である。
焼けた砂礫に拳や抜き手を突きいれ、焼け爛れ傷ついた拳を木の根などから生成した毒液に漬け込む。
そして解毒剤を飲み毒に耐える。――そんな過酷な修行を何年も毎日繰り返し続ける事、幾星霜。
やがて拳や指先が「毒」を帯びて、ターゲットにかすり傷を負わせるだけで命を奪うことが可能となるのだ。
まさしく「必殺」の暗殺術である。しかしそのトレーニング法自体が危険極まりなく、すでに伝承者も絶えた秘法だ。

 なんとこの青年米屋はその失われた業を現代に蘇らせ、独自の性トレーニング法へと昇華させていた。
その手法とは、精製前の玄米の中に己の陰茎を突き入れ痛めつけ、その後に米の砥ぎ汁に漬け込むのだ。
すると玄米との摩擦により陰茎が大きくハレあがり、傷口には米の研ぎ汁が染み渡る。
そしてハレがひく頃には元よりサイズ・硬度共に増し、それどころか陰茎全体が『米ぬかエキス』を帯びるに至る…
かくて『味よし』『サイズよし』『健康によし』のイイ事づくめの業物が出来上がるのだ。

「ぬう!そんなウラ技があったとは…」秘密のトレーニング法をせっせとメモに取る酒屋。
メモっても無駄だ。下品すぎて伊藤家で採用される訳が無いし、第一、常人にマネ出来るレベルではない。
酒屋は明らかに動揺していた。――あの巨根に加えて『美容と健康』とはこれはマズい…
そう!無駄な薀蓄を語るみの○んたがモテる謎、生前から死化粧していた婆さんが巨額の遺産を残せた謎、
それらの謎を解くキーワード、それは『美容と健康』である。

 それこそはまさしく彼ら御用聞きのターゲットである奥様達の『最大にして唯一の関心事』であるといっていいだろう。
それを上手く取り入れ、実践レベルまで引き上げた米屋の才覚…まさに恐るべし。
 女性情報誌の人気特集記事である「セックスでキレイになる」などという興味本位の猥談のレベルを遥かに凌駕し、
「米屋と浮気でキレイに健康になる」というガチンコ実践体験は、町の奥様の口コミで広まったのも頷ける。

「勝負あったな!酒屋。俺は親父とは違う事が理解できたか?」
勝ち誇る米屋は調子に乗り
「ほ〜ら綺麗に健康になるお薬ですよ〜」などと言いつつ、
一見不潔そうな陰茎を差し出せば、
「えっホント?」何事も疑わぬ童女の様に躊躇なく陰茎を口にする芳野であった。
なんともマヌケな和姦成立シーンである…

「さて準備万端、イキますよ奥さん」芳野の口内で十分なサービスを受けた米屋は、芳野を軽々担ぎ上げる。
芳野のロングスカートをたくし上げ、パンティをずらすや一気に挿入した。衣服を脱がず事なく!だ。
「服も脱がさねぇでスマねぇな奥さん?間男の『こだわり』ってヤツなんだ」嫌なポリシーを語る米屋。
 間男たる者その関係を知られてはならない――危険な情事に身をやつす者としては当然の心得である。
それゆえ、奥様に嫌疑が掛からぬように、何時でも逃げ出せるように、脱衣は最低限に留めるのが作法。

 とはいえ、ここは3人以外は人気の無い密室。おまけに2人の間男は素っ裸である。なんのきがねが必要か?
これでは――
娘をソフ倫規定年齢という高いハードルを越えるまで育てたというのに、いまだ重力に逆らい続けるたわわな乳房。
年相応に脂の乗った尻。かつて妻と呼ばれた事があるとは思えぬ程、清楚な色を保持した花弁。
そのいずれもが直視できないではないか!はた迷惑極まりない、読者サービスというものを完全に無視している。

 そんな間男のポリシーはさて置き、話を戻す。いま米屋が力技を披露している体位はいわゆる『駅弁』である。
この青年、見た目は文学青年のような風体だが、やはり米屋・されど米屋、なのだ。
日頃から、未亡人の一人暮らしに1袋、新婚夫婦に2袋、二世帯住宅大家族にどーんと一俵米俵!というふうに
米を担ぎに担いで(ついでに奥様も担いで)鍛えた抜いた肉体である、芳野一人など造作もなく上下させる。
密室に肉と肉がぶつかり合う音が響き渡る…そのリズムに乗せ、やがて芳野の嬌声が奏でられる…
 米屋の荒々しく若い性技を受け、初めこそ苦痛の呻きをあげていた芳野だが、
すぐにも、うめきはあえぎに、拒絶は許容に変わった。
いまでは米屋の腰が奏でるリズムに、肉体を、嬌声を合わせる様になっている。
火が出そうなピストン、これもまた米屋のトレーニングの賜物なのだった。

 そんな米屋のハードトレーニングを裏づけするエピソードがある。
それは商工会が町興しの一環として催した「とうかんもり巨大餅つき大会」でのことだ。
屋久杉を切り出して作られた巨大臼に1トンのモチ米を投じ、町の男衆が総出でつきあげた。
 これは町内外の話題を呼び、たいそうな集客を見せものだ。
しかし話題の中心は「餅つき」自体ではなく、
屋久島で屋久杉を無断で切り倒した駅前グリル『ぎとぎと』のマスターである。
いろんな意味で話題の人物となった。国会でも話題になった。とゆうか問題になった。

 しかしもう一人注目された人物がいる、それが米屋だった。
両手に一本づつ杵を持ち、左右交互に高速でつき続けるその業は、
腕力のみならず強靭な下半身の安定があってこそだ荒業だ。

東京から取材に来ていた新聞記者をして
「すごいわ!なにか暴れ太鼓を見ているみたい。他の人がマーチやロックのリズムなら、
 あのお米屋さんはツーバス!スラッシュメタルのリズムだわ」と言わしめた。
これにより米屋は一気にファン層を拡大し、先代が破れて以来不利であった勢力をほぼ互角にもどしたのである。

勝利を目前にした米屋は
「『あきたびじん』にぃ〜『ひとめぼれ』ぇ〜『亀の尾』つっこむ『どまんなか』〜」
などと旭の自動車ショー歌の卑猥な替え歌を口づさみながら、御機嫌で芳野を抱えて部屋を練り歩いている。
芳野の高まりも頂が見えかけた刹那、どどーん
完全勝利すんでのところで…タイムアップの和太鼓の音を聞いた。

 赤ら顔を青くしていた酒屋は冷や汗をぬぐった。
「フン、時間か…命拾いしたな酒屋、しかしもはや勝負は決した」
不敵に笑う米屋。「いいや、判ってないなボウヤ。当方に秘策あり――だ」
『後攻酒屋!ギャジメェ』どどーん

ようやく顔に赤味が戻った酒屋がブリーフを脱ぎ捨て、いまだ荒い吐息をつく芳野の手を引き、
部屋の隅へと導くと、そこにはカーテンで仕切られたスペースがあった。
酒屋がすらりとカーテンを開くとそこには…
「な に ぃ !」米屋が叫んだ。
「さぁて奥さん、まずはコイツを握ってもらおうか?」
酒屋が好色な声色で囁き、芳野の白魚のような手を掴み、手前へと引きつける。
「酒屋め!なんてイヤらしいマネを!だめだよせ!奥さん…」
「外野は黙ってろ!」酒屋の恫喝に、米屋は沈黙する。
「さあ」と自らの大きな手で、芳野の手全体を包みこむようにして(コイツ)なるモノを握らせた。

「えぇ…えっ…あっ?なんか硬くてザラザラしてて…先っぽがくびれてる…コレって?」
「そうさ想像通りのモノだよ」と嬲るような返答を酒屋はした。すでに言葉攻めという前戯が始まってるのだ
「酒屋!ソレは人妻いや人体いやいや人類に対する冒涜だ、いくらなんでも…オ ロ ナ ミ ン Cは無いだろう!」

部屋の隅に隠されていたものとは、酒屋が趣味で集めた「空き瓶コレクション」であった。
世の東西、時の古今を網羅して、机をひな壇にずらりと並べられた瓶の山。
一見すれば夏の糞暑いさなかに行われる、お涙ちょうだい・お金もちょうだいのアレにも見える光景だ。

「フンなんとでも言え」と意に介せず、酒屋は芳野に
「あんなデッケえガキがいるんじゃコイツの方がいいんじゃねえか?」と握らせたのは
オロナミンCより、サイズ・値段ともにチョットお得な『デ カ ビ タ C』だった。

「あんな空き瓶が奥さんをアンナとこやコンナとこを」身悶える米屋。
まだ年若くストレートな性交を好む米屋にとっては、瓶などの異物挿入は邪道。
しかしそれ故か?普段見慣れぬシュチュエーションがツボに入ったらしい。米屋は空ろな表情で、
「ああ無機質な…ビイドロの…器具が…奥様を…出入りする」とブツブツ言いながら妄想に拍車を掛けている。

「いやよ。こんな太いの入らないわ」とイヤイヤする芳野を見て、
酒屋は(コイツはMだ…)とほくそえんだ。ややSな酒屋にとってMならお手の物。ヨシ!もう一押しだ。
「フッこんなトコでネをアげられちゃこまる。ウチは酒屋だ、コイツをご馳走しなきゃなんねぇんだよ」
と握らせたのはビール瓶(小)である。あぁそんな――と益々顔を赤らめる芳野に矢継ぎ早に握らせていく。
「その次はコレ」中瓶。「チョット慣れたらコレ」ダルマの愛称で知られるウィスキー「さらにコレ」コーラペットボトル1L…
いまや酒屋はノリにノッテいた、自分の言葉攻めに酔っている感もある。

 芳野も言葉に嬲られウットリとしている。そして酒屋はトドメとばかりに言い放った。
「そしてぇ最終的にはぁコイツだぁ!」「ええ!?コレはナニ?すごくおっきい!」
間髪入れず酒屋が自慢の喉を披露した。「お れ と お 前 と、大 五 郎 ぉ 〜」大五郎お徳用サイズだった。
「… い く ら な ん で も そ れ は … ム リ 」米屋と芳野の声がユニゾンした。

参考リンク『人体と大五郎の比較図』(ttp://www.kyowa.co.jp/syurui/gallery/daigoro.htm#2)
「キサマ!そんな器具を使うのはうらやましい…もといズルいぞ!そんならウチもプラッシーを出すぞ!」
不平を漏らす米屋にむかい、
「推定出荷本数○千本未満がナニを言う!コンビニ売りされない様な、弱小飲料はだまらっしゃい」
と全国の米屋と武田製薬を敵に回すようなことをピシャリと言いすえて、
「まあ今日のところはコイツで勘弁してやるか」と酒屋が言う。

ホレと渡されたビンを撫でる芳野。
「あぁ他のビンよりスベスベでデコボコしてて素敵」陶然とした表情で撫で回す
「奥さんは東京から来たんだってなぁ、ソイツは都会モンにはキクぜ?」
不敵に笑う酒屋が芳野に渡したビンとは
清涼感溢れる水色と独特の凹凸あるデザインが、なるほど都会暮らしには郷愁を誘う…ラムネの空き瓶だった。

「さあて可愛がってヤルから横になんな、奥さん」
酒屋は素直に従う芳野の下腹部にラムネ瓶を挿入する。
先の米屋との激しい行為、加えて酒屋の言葉攻め(最後に冷めているが…)で芳野のソコは必要以上に潤っている。
なんの抵抗もなく飲み込まれていく。
「ほれ見てみろクビれのトコが行ったり来たり…キクだろ?」酒屋は言葉攻めを再開した
その声は既に快感酔っている芳野にはもう届いていないし、そもそも盲目ゆえ見ることができない。しかし――

「アぁんスんゴい、クビれのトコが出入りするタビにぃ…」
ややハスキーな声が酒屋に応じる。
「ホレ、瓶のなかにオメエの汁が溜まってきたぜ」
盛り上がる酒屋。やっぱり盲目の芳野は見えない。が、
「ほっホントに、瓶の中でチャプチャプと…イヤ!許してぇ」
先ほどよりカマっぽい金切り声で答えていたのはお約束的にカブリつきで見ていた米屋だった…
「なんでお前が返事すんだよ!」米屋が殴られた。

「あの…喧嘩はヤメて下さい、わたしが盲目なのがイケないんです…ゴメンなさい」
芳野は意味もわからず誤ってみた。激昂した2人組の陵辱鬼が…という怖い考えに囚われたからだ。
酒屋は気を取り直して次策をくりだした。
「でも音はよく聞こえるよな?」といやらしく言い放つや、ラムネ瓶を激しく出し入れしはじめた。
「ホーレ、耳澄ましてみろや、ビチャビチャ音が聞こえるだろ?それに濡れた水音だけじゃなく…他にも…な?」
「?あっあぁ!聞こえます!響きます!お腹のなかで…」
「そうさ、オマエの膣内(ナカ)を駆け巡る!ビー球の音さ!」
まるで『世界の果てへと走る外車の排気音』を語るような二枚目声で酒屋がいった。
それならばそのビー球の音は、ココロが絶望していない人にだけ聞こえるのだろうか?
商工会議所の一室、美しき未亡人の吐息と、水音と、ビー球のカラカラという音だけが響く。

「さあて奥さんも楽しんでるみたいだし、そろそろワシも楽しませてもらうか」とブリーフを脱ぎ捨てる。
ブラ〜ンと米屋とは違った擬音伴って現れたモノは、竿こそ米屋に劣るものの、
驚愕すべきは信楽焼きのタヌキを彷彿させる酒屋自慢の大玉。酒屋だけに「多満自慢」だ。
常人の2倍は在ろうかという大玉は「ナンボでもダシまっせ」と主張している。まさに「盛年の主張」だ。
なるほどコレなら、風も無いのにブラブラ揺れたとて不思議ではない。

巨峰(種アリ)を揺らして仁王立ちする酒屋と、それを待ち受ける芳野。ある種の緊迫感が高まっていく。
その緊迫感が最高潮に達した瞬間――即ち交合寸前。ドドーンと無常なる試合終了の和太鼓の音が響いた。
「オメーが邪魔すッから時間切れになっちゃったじゃねぇか」玉をしまうのも忘れ、米屋を追い掛け回す酒屋。
空気抵抗を受けて中年の汚ねぇ尻の割れ目に袋が食い込んでいる。
大玉はなびいてアメリカンクラッカーのように揺れ弾む…滑稽だ。

しばしの間、全裸運動会((c)SOD)を行った2人は、流石に不毛である事に気付いたのか、
「さあ奥さん!あなたをトリコにした御用聞きは?イケナイ関係を結びたい御用聞きは?さあドッチ?」
気を取り直し判定を求めて、芳野に詰め寄る。唐突な展開に芳野はたじろいでいる。
「ホラホラ美容と健康!カッケも直るし」膝を叩いて足をピョコピョコ動かす米屋。
「お手軽にソロプレイ可能だよん」と空き瓶コレクションを見せびらかす酒屋。両者ここに至り必死の売り込みだ。

しかし当のジャッジ・芳野は、ここへきてやっと自分の置かれた状況に合点がいったのか、
「あっあぁコレってそうゆう勝負だったんですね、私てっきり〜脱 獄 し て き た 黒 磯 市 の 人 さ ら …」
「不穏当な事を口走らないように!それよりドッチが上か?お答えください!」
激しくハモる御用聞き達。

実を言えば二人とも今回の勝負を通じて、相手を認めつつあった。
今回の勝敗だけで全てが決着するとは思っていない。むしろこれは『スタート地点』なのだ――
しかし、切磋琢磨する上で現段階の2人の力量を確認したい。
言い換えれば、負けても良いからはっきりさせたいのだ。
「さあ!さあ!ドッチ!ドッチ」とにじり詰め寄る2人に、ゆっくりとした調子で芳野がジャッジを下した…
――精神的にヤバイ人達だ。逆らったら殺される――芳野は初めそう考えていた。
だから、如何なる行為にも耐えた、されるがままに応じた。
ところが自分が拉致させた理由を聞けば「どちらの性技が上か?」を純粋に決めたいという。
そしてこれ以上は何もされないというのである。どこか狐狸に化かされた気がする。

 ホッとして冷静になってみれば、思い返してみると確かに二人とも紳士的ではあった。
芳野自身、夫と死別してから長いことゴブサタであった事もあり、正直気持ちよかった。ちょっと得した気分だ。
しかし、二人の鬼気迫る様子からして「どちらが上か?」を判定しない限りは開放されないようである。
最悪「もう1ラウンド延長戦!」というケースもありうる…あっソレいいかも!などいう不埒な考えを追い払う芳野。

 なるほど世の奥様方が夢中になるのもわかる。夫・子供の居る身でありながら、不貞に溺れる背徳感たるや…
…背徳感…?   しばしの間、芳野は自分の心と自分の肉体をみつめなおした。
思えば悲しみ多い人生であった。その合間に訪れるわずかな喜び・希望。
そして、虚飾を捨て去った後の心に、ポツリとひとつの『答』が残った。
それは幾ら願おうと叶わない、それ以前に願う事が禁忌とされるモノであった。しかし…
永い沈黙を破り、芳野がゆっくりとした口調で判定を下した。

「どちらもダメ…」――「「は い ?」」それは一体どうゆー事でしょう?と頭上に【?マーク】を浮かべた2人。
「どちらも ダ メ です、燃えないんです…」と芳野が判定をくだした。
 性交率100%を自称し「落ちない人妻はありえず」を確信している2人にとっては受け入れがたい回答。
【努力と若さの米屋】対【老獪な技巧と言葉攻めの酒屋】 差は僅差、紙一重といって良いだろう。
それゆえに、この勝負を決するのは、――ジャッジの好みしだい――と2人は予想していた。
「ドチラもダメ」というのは2人にとって信じられない話なのだ。

「やっぱり浮気ってイケナイ事だと思うんです。それでイケナイ事の方が燃えるっていうのも判るんです。」
「でも、私は…気付いてしまった…最 高 の タ ブ ー に!」芳野はすっかり自分の世界に入っている。
「「あの〜そこをなんとか、あたしらのドッチが上か?だけでいいんで…」」ヒキぎみな御用聞き達が遠慮がちにお願いしても
「だめです!至高・究極が決まった以上、それ以外はカス! カ ス に 順 位 な ど 不 要 !」とニベも無い。

 すると突如として部屋のドアが開き、簸川五樹が飛び込んでくる。
「かあさん!ここに居たの!急に居なくなるから心配したんだよ。」手を広げて近づく五樹。
芳野は声を頼りに走りよる。「ごめんなさいね、かあさん道にまよっちゃって…アッ」
躓いたフリをして抱きついた芳野は、五樹の胸で頬をうずめて満ち足りた表情をみせる。
「もう迷わないように道案内よろしくね五樹。それじゃおじゃましました〜」
いそいそと手を握り合い出て行く簸川親子を、呆然と見送る御用聞き達。
「あの奥さんのツラみたか、米屋?」 「ああ、見た。恋する乙女の顔だ。女学生のツラだった」
「あのアンちゃん『かあさん!』って呼んでたよな?」 「ああ、呼んでた」
2人残された部屋の中、酒屋と米屋がウツロな会話を続ける。
「間男より近親の方がイイつう事か?」 「俺らもまだまだ修行が…つうか普通にマズいだろ近親は」
義理の関係とは思いもよらない両者は納得いかない表情だ。いや、義理でもホントは不味いんだが…
義理ならOKと偉い人が言ったのでセーフなのだ。世の中不思議なボーダーラインが在るのだ。

 部屋に取り残された御用聞き達はいそいそとブリーフ一丁で後片付けをしていた。やがて寂しき祭りかな。
「とりあえずノーカウントつーこって」と酒屋。
「『ぎとぎと』で打ち上げでもしましょか?」と米屋。
どちらからともなく頷き合う「御用聞き悪魔超人タッグ」の2人。試合を通して培った友情パワーは本物のようだ。
…しかし、その背後には…
…ん、アレ?誰も居ない…オチないじゃん


 場所は変わって、簸川家の雑木林にオチ役を放棄した蔵女がいた。
見れば地面に書いた土俵の上でカブトムシとクワガタを戦わせている。
その土俵の脇にはカナブンが控えている。おそらく次の挑戦者役なのだろう。
もしかするとバトルロイヤルかもしれない。いずれにしろカナブンにとってはかなり残酷な暇潰しだ。
あ〜あ〜蔵女サン?あの人達を赤い雪に変えて貰わないとオチないんですケド〜

「あれは絶対美味しくない…」
クワガタに挟まれてカブトムシにつつかれているカナブンに声援を送りながら蔵女が答えた。
「それにあのような爛れた大人の逝く末など見届けとうない…」
あ〜ごもっとも…貴方がそう言うなら仕方がない。

「それより…むしろ…芳野を…」蔵女の瞳に赤い妖色が浮かぶ
おお、蔵女サンが怖いことを考えはじめたんで、
『稲荷杜は今日も平和だ。』というところでお開きにしておいたほうが良さそうだ。

稲荷杜盲点外伝〜御用聞き頂上決戦〜(了)



・登場人物(および説明)
米屋(オリジナル・盲点中での山鹿青磁(役)の妄想に色づけ。謎No.229)
酒屋(オリジナル。謎No.216)
簸川芳野(ひのかわ・よしの。腐り姫本編主人公の母。後妻の為、義理の関係)
・ちょい役
簸川五樹(ひのかわ・いつき。腐り姫本編主人公)
蔵女(くらめ。同ヒロイン・くさりひめ)
グリル・ぎとぎとのマスター(けーこちゃん。ライアー固定ハンキャラ(笑)

・謝辞
協力:ウチの地元町内会会員である、お米屋さんと酒屋さん
米屋さん、「ぬか」に関する知識と素敵な替え歌を教えてくださいましてありがとうございます
酒屋さん、仕事の合間に話してくれた「間男武勇伝」勉強になりました。あんなに楽しいアルバイトは初めてでした
そして、「腐り姫」という楽しい時間を下さったライアーソフトさまに感謝いたします。

・付記
※本作は『盲点』の外伝ですので、腐り姫本編の設定を一部無視しています(ホントは簸川芳野が後妻であるのは有名...等々)
※投票所の告知をみて本格エロを期待した人が何人「ダマされた!」と文句言うかな…俺も嘘っ子の仲間入り〜(笑
※協○発酵のリンクはマズいかにゃ〜?
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