紫陵辱
紫が目を覚ました場所は、植物と肉の中間のような物で出来た部屋だった。
蒸し暑く、すえた匂いが充満する気味の悪い部屋。
「・・・あれ・・・?・・・ここ・・・は・・・?」
それが、ゆらぎの体内であると、紫に想像出来る筈も無い。
状況すら把握できず、必死に首を巡らす。
四肢は拘束され、部屋の真ん中の地面に大の字で寝ている格好だ。
衣服も着ておらず、整った身体を露にしている。
意識がはっきりし始め、自身の置かれている状況が脳に伝わる。
「何!?なんで!?どうして!?」
やや素っ頓狂な、それ故に彼女らしい声が上がる。
手足に力を入れてみてもびくともしない。
そして、今の紫の叫びに反応したのか、肉質の壁が蠢き出す。
壁だと認識していた物は、全て親指程の太さの触手だった。外見はミミズのそれだ。透明な粘液を分泌し、ネチャネチャと不快な音を立てている。
壁の形が崩れ、触手が紫の身体を絡めとっていく。
「っひ!!!」
羞恥にも、嫌悪にも勝る恐怖。本能が「捕食される」と警鐘を鳴らす。
だが、拘束された四肢は相変わらずだ。
紫は腹のそこから渾身の悲鳴を上げる。
「いやああああああ!!!」
その悲鳴と同時に、触手の先端から白濁した液体が紫の身体にぶちまけられる。
「あっ!?いやぁっ!!」
無駄の無い腹に、扇情的な太ももに、かすかに自己主張する乳房に、桃色の性器に。
触手達は場所を選ばず、紫の全身をコーティングするかのように粘液を擦り付けていった。
ソレは何分続いただろうか。
触手の群れが噴射を終えたときには既に紫の身体はベトベトであった。
「うう・・・こんなの・・・やだよ・・・岡ちん・・・助けてよ・・・!」
気色悪さと、恐怖が、紫の精神を蝕んでいく。
涙声で吐き出した救いを求める声。それがどれだけむなしいか、紫自身がよく知っているのではないだろうか。
現状はそのまま、救いの手は現れず、捕食されようとしているのだから。
捕食とは言っても、紫の想像の埒外の形だが。
噴射を終えると、触手たちは別の動きを見せた。
「え?・・・ふやぁ!!」
先程浴びせた白濁を塗りこむように紫の身体を這いずり回っている触手達。
腹、背中、乳房、首筋、肩、太もも、くるぶし、臍穴、膝の裏、性器、挙句の果てにはセピア色の菊門までも。
「いやっ!!いやぁああああ!!」
嫌悪に声を張り上げても、触手の動きは止まらない。
グチュグチュと粘着質な音を立てながら、紫の体をもてあそんでいく。
ある者は自身の腹を使い粘液を引き伸ばし、またある者は先端で押し込むように突きまわし、またある者は勢いよく先端で舐めるように蠢いていく。
「・・・!!!」
想像を絶する不快感に、紫は声すら出ない。眉根を寄せ、目を閉じ、唇を噛み締め、拳を握り、嫌悪に耐えようとする。
しかしソレを嘲笑うかのように触手の動きは激しくなっていく。
数を増す触手、それに比例して粘着音も大きくなっていく。
あまりの嫌悪感に紫は暴れだそうとした。
つと、その時、一本の触手が乳房の頂をかすめた。
「っんん・・・!」
紫の口から、紫自身が聞いたことも無いような甘い声が漏れる。
「なに・・・今の・・・?」
その答えは、触手達がしてくれた。
「アァ!?・・・んひいいい!!」
今まで嫌悪と感じていた感覚が、快楽となって紫に襲い掛かる。粘液を塗りこまれた部分、つまり全身が敏感になっているのである。
触手が這い回っている全身から、痛みと間違えるほどの快楽が流れ込んでくる。
「んやあ!!止め・・・ってええええ!!」
腹部をビクビクと痙攣させながら、懇願する。その懇願は嫌悪のためではないだろう。声音が快楽に濡れていたのだから。
触手達も気を良くしたのか、先程に倍する動きで紫の肢体を舐め尽くす。
「ああああぁ!!何・・・!?なんか・・・来る・・・くるううううう!!!あああああああ!!!」
初めて味わう性の頂。腰を突き上げ、全身を痙攣させる。
「あ・・・・はぁぁぁぁ・・・」
頭の中が白く塗り込められ、意識が飛びかける。浮遊しているような錯覚。そのまま意識がホワイトアウトしていく。
だが
「んぅ!?あ、ひゃぁあああああ!!」
快楽によって意識を覚醒させられる。快楽によって意識を飛ばされかけるが、襲い来る快楽が意識を飛ばすことを許さない。
暴力的な肉悦の連鎖に巻き込まれ、紫はただただ甘い声を上げるのみだ。
「っひいいい!!?またぁ!?またああああああああ!!」
絶頂を幾度重ねても、すぐに次の頂が襲い来る。
「やぁああああ!・・・もう・・・狂っちゃうううう!壊れぇええ!!」
紫が幾度達しても、触手達は休む気配を見せない。それどころか新しい動きを見せ始めた。
ジュルゥッ
触手たちの先端が割れ、中からさらに細い触手が出てきたのだ。大きさ、形、共にミミズのそれに酷似している。だが連想されるのはミミズというよりイソギンチャクであろう。よく見るとその一本一本に口のようなものまで付いている。
「もうぅ・・・やぁ・・・狂っちゃうよぅ・・・これ以上されたら・・・狂っちゃう・・・」
それが与える快楽の強さを想像し、弱々しく呻く。
果たして、その願いは聞き入れられなかった。
「・・・ッ・・・!!!!」
ソレが、一斉に紫の身体に取り付いた。
「ダメぇ!そんな!先っぽぉ!!」
乳首に巻きつき
「吸わ、ないでぇ、アヒィ、お願い、だか、ああああああ!
臍の垢をこそげ落とすように舐めしゃぶり
「そん、なとこ、もなぁ、のぉ!?んきゃああああ!」
耳朶に入り込み、
「やぁぁ、そんなのぉ、優し、過ぎぃ!!」
手足の指をしゃぶり抜き
「は、恥ずかし、ヒィイイイ!」
肛門のしわをなぞり上げ、
「あ、あ、そこぉ!!!」
淫核の皮を剥き、
「!!・・・きゃはああああああ!!!」
扱き上げる。
それぞれが別々に動くが、紫の身体を襲った快楽は一塊だった。
「イ、ヒイイイイイイイ!!らめ、らめえええええええ!!」
先程の責めよりも繊細で、だがしかし先程の責めに倍する暴力的な、快楽。
ろれつも回らず、舌足らずな言葉で叫び立てる紫。身体に流れ込んでくる快楽が、逃げ道を口に見つけたかのようだ。
涙を流し、涎を垂らし、愛液を漏らし、よがり狂っている。
そして、止めは唐突に訪れた。
キュプウウウウウウッ!!
「グッ!?ひゃあああああああああああああ!!!!」
触手達が一斉に吸引を始めたのだ。
面ではなく、点の責め。しかも全身が性感帯のような状態で、隅々まで、である。
「凄っぉおおぉおおおぃいいいいヒィイイイイイ!!!」
首をガクガクと打ち震わせ、涎と涙を撒き散らし、股間からブシャブシャと愛液を迸らせる。
そして、脳がハレーションを起こし、紫の意識が飛んだ。
触手達は、意識が無くなった紫の身体をしばらく嬲りまわしていたが、反応が無いのが面白くないのかすぐに責めの手を止めた。
だが、これで快楽漬けの拷問が終わったわけではない。
トプットプッ
触手の一本が、紫の口に何かを注いでいた。紫は無意識ながら、その液体を嚥下していく。
その液体が、何をもたらすかも知らずに・・・
以下次回