幻燐の姫将軍2 SS
私はバルジア王国王女、リン・ファラ=バルジアーナ。今はメンフィル国軍の一員として日々努力している。
…しているのだが。
なぜか今私はメンフィル国王、キウ…リウイ王に珍妙な兜を手渡され、その着用を強要されている。
彼が言うには「戦士としての成長に必要不可欠な儀式」との事。実際、メンフィル王自身も(怪しげな)仮面を常に着用している。
しかし、玉座の後方に飾られた珍妙としか言いようのない兜の数々を見ると、これはただのキウ…リウイ王の趣味なのでは…
そんな私の疑念を裏付けるかの様な王の視線が腕の中の兜に集まっている…
…結局私は珍妙兜を(半ば強制的に)かぶらせられて王の間を後にした。
正直、国王の真意はわからない。ただ、イリーナ王妃から直接魔法を教えていただけるとは予想外だった。
これを期待の現れだと私は思うことにした。王妃にご教授頂いている間、王のうっとりした視線が兜に集中していた様な気もしたが…
私が気持ちも新たに持ち場に戻る途中、正面から釣り目の女性が歩いてきた。フレスラント王女、リオーネ・ナクラ。
彼女には以前嘲笑とも侮蔑ともとれる冷たい目を向けられた。このような姿の私を見て彼女はどのような視線を投げかけるのか…
私は笑われるのを覚悟した。
「見違えたわね、リン王女。ふふ、胸をお張りなさい。」
うつむいた私にかけられた言葉には嘲りも侮蔑もなく。
はっ、と顔を上げた私の目に映ったのは、初めて見るリオーネ王女の柔らかな笑顔。
その笑顔のまま、彼女は王の間へと消えていった。
その後ろ姿を見送りながら、かぶっていた兜を脱いだ。
さっきまで珍妙で、異様にしか見えなかったそれが、ひどく雄々しく、誇らしいものに思えた。