それから…

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人の身でロウ・エターナルを倒しハイペリアに帰る事になった悠人と佳織。
そして、やがて宴は終わり、ハイペリアへと帰る時間が刻一刻と迫る…





チーニの月 青よっつの日 昼

時深に呼ばれ、ハイペリアへと帰る準備を進める悠人達。
皆が見送りに来るなか、悠人達は別れを惜しむ……


「これで、もう会うのも最後なのですね…」
「ユウト様、あちらへ帰っても、私達を思い出してくださいね」
「パパァ、寂しいよぉ…。でも、オルファ、頑張るから!」
「…ん。バイバイ」
「手前、恩を返せず申し訳ありませぬ…。ユウト殿、御達者で」
口々に揃えわざわざ来てくれる。2年間同じ時を過ごした仲間であろうとも、やはりそれは嬉しかっ
た。


―――――俺は恵まれていたんだな―――――

ユウトは心の中でそう思う。実際、今までの現実での温い生活からこれだけの戦いの中で心が壊れな
かったのは、今ここにいる仲間達のお陰だろう。
佳織を救うという目的があったにせよ、この、非・現実的な世界でまともでいられたので不思議なく
らいだ。皆に心中で感謝する。
(……ありがとうな、皆)
「―おや?ユウト殿、泣いておられるので?」
ウルカがそう呟く
「! ばッ、馬鹿、何言うんだよウルカ!そんなワケないだろ!?」
「ふふっ、お兄ちゃん、嘘は駄目だよ?」
「か、佳織まで…」

クスクス、アハハ……。周囲からは笑いが起こり……

「もう、これで最後なんだね…」
「カオリ、向こうでも元気でね。カオリと料理を一緒に作るの、楽しかった!」
「うん、私もだよ、オルファ。…私達、離れてもずっと友達だよ!」
王城に囚われていた佳織に、ずっと話をしてくれていたオルファ。その元気さに何度自分も励まされ
ただろうか。
「これで…もう会う事もないのでしょうね。向こうでもリクェムはキチンと食べてくださいね」
「わかってるよ、エスペリア。今まで世話してくれて…ありがとな」
こっちの世界に渡ってから、聖ヨト語を覚えるまで熱心に教えてくれたエスペリア。どれだけの苦労
をかけたかもわからない。
「ユウト、元気でな」
「あぁ、アセリアも、もっと自分のやりたい事を見つけろよ?」
初めは無愛想だとも思ったアセリア。ただ、自分の感情が表現しきれないだけで、無愛想なわけじゃ
ないと知ったのはいつだっただろうか。そんあアセリアの感情豊かになっていくのを見るのは長い戦
いの中でも楽しみの一つだった。
「ユウト殿、カオリ殿。今まで手前に優しくしてくださり、感謝してもしきれませぬ。どうか、あち
らへ帰ってもお元気で…」
「ウルカ…。あぁ、これからも色々あるだろうけど、ウルカも頑張れよ。応援してる」
初めに会った時から印象が一番変わったのはウルカだろう。その生真面目すぎる性格が故に起こった
数々の事件、忘れたくても忘れなれない物ばかりだ
「あの初めて作った料理…思い出すだけで体が熱くなるよ」
「っ!あれは! …卑怯です。ユウト殿」
「今では美味しい料理を作れるもんな。また俺達の事も思い出してくれよ」
「…承知。」

そして、レスティーナ。
「ユウト殿、こちらの世界を救って下さった事。まことに感謝しております。貴方方の協力で守られ
 たこの世界も平和、これからも、私がを守り続けてみせます。」
「最後まで真面目なんだな、レムリア。ワッフルばっかり食べてんじゃないぞ?」
「ワッフルじゃないもん!ヨフアルだもん!ユウト君のいじわる!」
「……ぷっ」
「ふふふっ」
初めて見るレスティーナの仕草にキョトンとする一同。やがて広まる笑い

……楽しい一時は過ぎる。

「悠人さん、佳織さん、時間です。門が開きますので、こちらへ…」
時深が俺達を誘導する。思えば、時深にも随分世話になった。もう会う事はないだろうが、最後に
お礼ぐらいは言っておきたい。
「さぁ、こちらへ立って下さい。…では、転送を開始します。」
「永遠神剣第三位『時詠』よ!神剣の主として命ずる」
「高嶺悠人、高嶺佳織」
「この二人の時を遡らせよ」
「永遠神剣第三位『時果』よ!次元を越え、神剣の主として命ずる」
「時の彼方に閉じた世界を構築せよ!」
時深の詔は続く。そこに、
「時深!今までサンキュな。お前の事も好きだったよ」
「在るべきだった世界へとてんそ……えぇえ!?」

バシュウゥ!!開きかけていたゲートが突然音を立てて揺らぐ!

「………え?」

ぱふっ

なんとも情けない音と共に、目の前にあったゲートが完全に閉じる。
「いいいいいい、一体、突然何を言うんですか悠人さん!」
「折角開いてたゲートが閉じちゃったじゃないですか!!」
「え?て事は……?」
「次にゲートを開く機会があるまで、このファンタズマゴリアにいなきゃならないって事です!あぁ
 ぁまだやらなきゃいけない事一杯あるのに…」
「どうしてくれるんですか!こんなの私の力でもわかりませんでしたよ!」
「なんだよ!俺ばっかり責めて!エターナルのくせにたったあれだけの事に動揺するほうも悪いだろ
 !」
「エターナルだからなんて関係ありません!貴方の為に恋愛なんて今までしてこなかったんです!」

……!
……!!

二人の言い争いは続く。ポカーンとした表情で事の成り行きを見届けてい六人。

―――――――半刻後

「はーっ。はーっ……」
「ふぅふぅ…」
ずっと喋り続けていたせいか、かなり疲労した二人。エスペリアがどこからか差し出した水を飲む。
「…で、時深、結局俺達はどうなるんだ?」
「今のままではゲートを開く事が出来ません。また、私の『時詠』『時果』に力が溜まり、ゲートを
 開けるようになるまで…。およそ、三ヶ月」

「て、いう事は…あと三ヶ月、パパとカオリと一緒にいられるって事だよね!やったぁ!」
オルファが喜びカオリに飛びつく。
「あと三ヶ月の間、まだいられるのですね。ユウト様、カオリ様、今しばらく、お世話させて頂きま
 す」
どこまでも謙虚なエスペリア。剣の声が聞こえない今では只の一般人と変わらないというのに。
「ユウト、まだ一緒なんだな。うん。また私の料理食え」
アセリアも、笑いながら話しかけてくる。
「おぉ…。ユウト殿、まだおられるのか。それでは、手前と花の世話でもやりませぬか?」
「ユウト君、また今度一緒にヨフアルでも食べる?」
口々に喜ぶ皆。ただ、もう別れだと思っていたユウトにとっては半分程度しか耳に入っていなかった
りする。
(なんだよ…。結局まだここにいるって事か?)


「……は…はは…。もうこうなりゃヤケだ!三ヶ月でも1年でも、1周期でもいてやろうじゃねぇか
 !!」


ファンタズマゴリアが静かになるのは当分先の話のようである。



完?
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