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「雄真とすもも〜」番外編
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名前: 「雄真とすもも〜」番外編(1/8) 2006/01/16(月) 21:47:47 ID:10OeNGU00
ガラガラ……
「失礼しまーす! 準さんはいらっしゃいますかー?」
あたしのことを呼ぶ、聞きなれた声。
「すもも? 準ならここにいるぞ」
「あ、準さん!」
そう言うと、すももちゃんは嬉しそうにあたしのところまで駆けて来る。
すももちゃんが雄真じゃなく、わざわざあたしに会いに来るなんて珍しいわね。
「よかった……準さん。まだ帰ってなかったんですね」
「うん。今から帰ろうかなと思ってたところなんだけど」
「すみません……いきなり呼び出したりなんかしちゃって」
「いいのよ。すももちゃんならいつでも大歓迎」
実際すももちゃんにこうやって頼られるのって、悪い気はしないしね。
「それで……話なんですが……あの……その……」
「? どうしたの? すももちゃん」
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名前: 「雄真とすもも〜」番外編(2/8) 2006/01/16(月) 21:48:40 ID:10OeNGU00
何やら話しづらそうに、目を伏し目がちにするすももちゃん。
その目線が、たびたび横にいるハチや雄真を追ってることに、あたしはすぐに気づいた。
「……すももちゃん。2人でどっか静かな場所に行こっか」
「あ……はい。そうしてもらえると……嬉しいです」
すももちゃんの言葉を受け、あたしは即座に雄真に目線を送った。
「ちょっと……すももちゃん借りてゆくわね。あんまり遅くはならないようにするから」
「……まぁ、すももきっての頼みだしな。よろしく頼むよ、準」
「うん。ありがと、雄真」
「おい雄真……大丈夫なのか?
大事なすももちゃんを、仮にもオトコノコである準と2人っきりになんかさせて……」
「少なくともお前より1000倍は安全だ」
「がーーーん!!!!」
何やらショートコントを繰り広げている男たちを無視し、
あたしはすももちゃんの手を取って言った。
「じゃ、さっそく場所移そっか」
「はい! よろしくお願いします」
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名前: 「雄真とすもも〜」番外編(3/8) 2006/01/16(月) 21:50:15 ID:10OeNGU00
「うん……ここならいっかな」
誰もいない学校の屋上。
女2人で腹を割って話をするには、絶好のスポットよね。
「それで……話って何? すももちゃん」
「えっと……ですね……」
少し話しづらそうに、すももちゃんがもごもごと重い口を開く。
「準さんに……教えてほしいことがあるんです……」
「あたしに?」
「……(こくり)」
すももちゃんがあたしに教えてほしいことって……一体何なんだろ。
「……あの……ですね……
準さんが……前に言ってた……その……オトナの起こし方っていうの……
できれば……教えて……ほしいです」
「オトナの……起こし方……?」
そう言えば前に、冗談ですももちゃんにそんなこと言いかけたことあったっけ。
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名前: 「雄真とすもも〜」番外編(4/8) 2006/01/16(月) 21:51:07 ID:10OeNGU00
「でも、何で……急に?」
「はい……自分でもわかんないんですけど」
おずおずと、すももちゃんが話し始める。
「以前のわたしだったら……純粋に兄さんを起こしたいという気持ちで、
こういうこと知りたがったのかも知れません……
でも今は……わたしは……兄さんの恋人ですから……
だから……兄さんに妹としてでなく、恋人として、何かできることがあれば……
わたしは、どんなことでもしてあげたいんです」
「そうね……何たって恋人だもんね」
好きな人に、恋人として、喜んでもらいたい……
女の子だったら誰だって、そんな気持ちになって当然だもの。
「それじゃ……これはすももちゃんには、
できれば教えない方がいいかなって思ってたんだけど」
「はい……よろしくお願いします」
早速、2人だけのオトナの授業が始まる。
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名前: 「雄真とすもも〜」番外編(5/8) 2006/01/16(月) 21:52:28 ID:10OeNGU00
「オトナの起こし方……一番ポピュラーなのは、お口を使う方法かしら」
「おくち……ですか?」
すももちゃんが、きょとんとした表情であたしを見つめる。
「それはその……兄さんの耳元で、思いっきりわーっと叫んだり……ですか?」
「……雄真の鼓膜が大事なら、それは避けた方がいいわね」
「んじゃあ、どうするんですか?」
「ふふ……それはね……」
あたしは顔に笑みを浮かべつつ、右手の人差し指を1本立ててみせた。
「雄真の元気なコレを、すももちゃんのお口で……パクッ! とね」
「え……え……えええええええええっっっ!!??」
あたしが人差し指をぱくっとくわえるその仕種に、面白いくらい慌てふためくすももちゃん。
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名前: 「雄真とすもも〜」番外編(6/8) 2006/01/16(月) 21:54:54 ID:10OeNGU00
「ええっと、兄さんのあれをこうするってことは、つまりそういうことで、
わたしのお口が、その……あぅぅぅ」
「……ごめんねすももちゃん。落ち着いたらまたお話しよっか」
「はぁはぁ……はい。もう落ち着きました」
さすがにすももちゃんには刺激が強すぎたかしら……少し反省。
「で、それで……兄さんは喜んでくれるんでしょうか……」
「少なくとも、これをされて喜ばない男の子はいないわね」
「そう……なんですか……?」
すももちゃんが少し、怪訝そうな表情を浮かべる。
「実際、身近なカップルとかでも結構やってるみたいよ。
朝の一番元気な時にされるのは、結構キクらしいし」
「ふぇぇ……そう……なんだ……」
すっかり上の空になってしまったすももちゃん。
きっと、オトナの階段の険しさに、驚き戸惑っている最中なんだろう。
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名前: 「雄真とすもも〜」番外編(7/8) 2006/01/16(月) 21:58:40 ID:10OeNGU00
「もちろん、やるのはすももちゃんだから、どうしても無理ならやる必要は全くないんだけどね」
「……」
その場でうつむき、何やら考え事に浸っているすももちゃん。
やがてすももちゃんが、意を決したように顔を上げた。
「ありがとうございます……準さん。明日、さっそく兄さんにやってみます!」
「うん……決して無理はしちゃダメよ」
「はい! 今日は本当にありがとうございました!!」
「あ、それとね……」
そのまま踵を返して帰ろうとするすももちゃんを、あたしは急に呼び止める。
「言い忘れてたけど……」
「? 何ですか? 準さん」
「その……今日あたしがすももちゃんにこんな話したってこと、雄真には内緒にしてね」
「兄さんには、内緒……ですか?」
「うん……あたしがこんなこと話したって聞いたら、きっとアイツ……怒るから」
「……そうですね。兄さん、けっこう怒りっぽい性格ですから」
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名前: 「雄真とすもも〜」番外編(8/8) 2006/01/16(月) 21:59:49 ID:10OeNGU00
……それだけじゃない。
雄真が、すももちゃんのことを、誰よりも大切に思ってるから……
だから、あたしがすももちゃんに変なおせっかいを焼いたことは、
絶対……アイツには知られてはいけない。
「それじゃ、今度こそ失礼します!」
本当に屈託のない笑顔で、あたしに会釈するすももちゃん。
その顔が、夕日に映えてとても奇麗で……
少しだけ、羨ましくなった。
あたしが雄真にしてあげられるのって、せいぜいこのくらいだもの……
「……あーあ」
ひとりになった屋上で、ため息をつくあたし。
「すももちゃんにここまで思わせるなんて……罪作りだぞ! 雄真!」
自分の中に溜まったよこしまな想いを吹き飛ばすべく、
あたしは夕日に向かって言葉を吐き出していた。
(「雄真とすもも、朝のカンケイ。」>>223-243に続く)
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