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「もしも明日が晴れならば」で1レスもの
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名前: 名無しさん@初回限定 2006/04/09(日) 11:47:01 ID:ySQjiN/n0
イツキちゃんが雨の中へと帰っていった。
気がつけば、いつの間にか日は落ちて辺りは薄暗くなっている。
明日のことを考えて、時が経つのも忘れていたらしい。
もしも明日が晴れならば――
イツキちゃんとあの丘の上で、暗くなるまで遊ぶんだ。
そのあとお母さまに叱られるかもしれないけど、構わない。
だって、イツキちゃんと二人で過ごす丘の上は、きっとずっと楽しいから。
でも…、この雨があがらなかったらどうしよう…。
もしも明日が雨ならば――
その時は、暗くなるまでイツキちゃんとお喋りしよう。
イツキちゃんは雨が降っても来てくれる。ずっと側に居てくれる。
だから、たくさんたくさんお喋りするんだ。
あの着物を見てもらって、ちはやが知らない外のことを聞いて……
明日はきっと楽しくなる。だから今日は、もう眠らないといけない。
これまでは、夜眠るのはとても怖かった。とても不安だった。
でも今は平気。
だって…、夢の中でイツキちゃんに会えるから。
とても楽しい夢が見れるから。
イツキちゃんと出会うまで、ちはやはただ生きているだけだった。
する事もなく、考える事もなく、死ぬこともできずに、心にはぽっかりと暗い窓が開いて…。
でも、イツキちゃんが来て、灯りをともしてくれた。
ちはやの心の窓辺に、暖かで柔らかい灯りを。
もしも明日が晴れでもなく雨でもなく、たとえばとても強い風の日だったとしても、
イツキちゃんは逢いに来てくれる。
きっと、ちはやを呼んでくれる…。
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